【株価分析】日野自動車の株価予想や下落・上昇原因を毎日更新、配当や優待なども分析

【株価分析】日野自動車の株価予想や下落・上昇原因を毎日更新、配当や優待なども分析
ライター:関野 良和

はじめに

皆さん、こんにちは。今回は日本の商用車業界を代表する企業の一つである日野自動車株式会社について詳しく見ていきましょう。トラックやバスなどの商用車を主力製品とする日野自動車は、長い歴史と確かな技術力で日本のみならず世界の物流を支えてきました。この記事では、日野自動車の株価に影響を与える様々な要素を分析し、投資判断の参考となる情報をお届けします。

日野自動車は1942年に設立され、トヨタ自動車の傘下企業として発展してきましたが、2026年4月には三菱ふそうトラック・バスとの経営統合が予定されており、新たな転換期を迎えています。この統合により、トヨタ自動車の子会社ではなくなる予定であり、商用車業界の競争環境にも大きな変化をもたらすことが予想されます。

それでは、日野自動車の市況、財務状況、製品・サービス、業界内でのポジション、強み・弱み、競合他社との比較、そして将来性について詳しく見ていきましょう。

最近の日野自動車の上昇・下落要因分析

2025年6月18日【更新】日野自動車の株価分析

株価の基本情報

2025年6月18日の日野自動車の株価は、終値が369.4円となりました。この日の株価は、始値369.9円から取引を開始し、高値374.8円、安値368.5円と比較的小幅な値動きとなっています。出来高は約652万株で、売買代金は約24億円に達しました。

最近の株価動向

日野自動車の株価は、6月11日に三菱ふそうトラック・バスとの経営統合の最終合意を発表した際に大幅下落を記録しました。この日は一時16.1%安の374円まで下落し、その後も軟調な展開が続いています。

6月11日以前は446.8円(6月10日)だった株価が、経営統合発表後に大きく値を下げ、6月18日までに約17%下落しました。この下落の主な要因は、統合前に実施される第三者割当増資による株式の希薄化懸念とされています。

株価評価と市場環境

現在の株価369.4円は、アナリストによる目標株価の平均値405円を約9.64%下回っています。また、理論株価536円と比較しても大幅に割安な水準にあります。

PBR(株価純資産倍率)は1.19倍、PER(株価収益率)は10.6倍となっており、時価総額は約2,123億円です。年初来の株価推移を見ると、高値633.7円(1月21日)、安値343.0円(4月7日)と大きな変動幅があります。

今後の見通し

日野自動車と三菱ふそうは2026年4月1日に経営統合し、新設する持ち株会社が東証プライム市場に上場する予定です。統合後はトヨタ自動車とダイムラートラックがそれぞれ持ち株会社の株式を25%ずつ保有する形となります。

この統合により、日野自動車はトヨタの子会社ではなくなりますが、商用車の開発や生産で協業を進め、次世代技術開発でも連携を強化する方針です。

市況:日野自動車を取り巻く市場環境

株価の推移と市場評価

日野自動車の株価は過去数年間で大きな変動を見せています。2022年に発覚したエンジン認証不正問題の影響で株価は大きく下落し、2025年6月時点では369.4円前後で推移しています。52週の高値は633.7円、安値は343.0円と、かなりの変動幅があることがわかります。

過去10年間の株価推移を見ると、2017年には1,460円の高値をつけていましたが、その後は下落傾向にあり、特に2022年以降は大きく値を下げています。これは主に認証不正問題による業績悪化や信頼低下が要因と考えられます。

現在の株価指標を見ると、PBR(株価純資産倍率)は1.19倍、予想PER(株価収益率)は10.6倍となっています。アナリストによる目標株価の平均は405円で、現在の株価からは約9.64%の乖離があります。

商用車市場の動向

日本の商用車市場は、2024年に819.84千台の規模に達し、2033年までに1,109.30千台に成長すると予測されています。年平均成長率(CAGR)は3.21%と堅調な伸びが見込まれています。

特に注目すべきは、2024年4月から施行された「物流の2024年問題」と呼ばれるトラックドライバーの時間外労働規制です。この規制により、輸送能力が2024年には14.2%、2030年には34.1%不足する可能性が指摘されており、物流業界全体に大きな影響を与えています。

また、環境規制の強化により、電動化や低炭素技術への移行が加速しています。特に欧州連合(EU)が2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出すなど、世界的にEVシフトの動きが加速しており、商用車市場にも大きな変革をもたらしています。

決算:財務状況と業績分析

直近の決算概要

日野自動車の2025年3月期の連結決算では、売上高は1兆6,972億円と前期比約12%増加しました。営業利益は574億9,000万円と前期の赤字から黒字に転換し、経常利益も393億1,000万円の黒字となりました。

しかし、親会社株主に帰属する当期純利益は2,177億5,300万円の赤字となりました。この大幅な赤字の主な要因は、米国およびカナダ市場におけるエンジン認証不正問題を巡る巨額の特別損失(2,584億1,300万円)の計上です。

財務状況を見ると、総資産は1兆4,781億8,000万円と微増したものの、純資産は2,510億2,000万円と前期比で2,124億円減少しました。自己資本比率も前期の26.8%から12.1%へと大幅に低下しており、財務基盤の弱体化が懸念されています。

過去5年間の業績推移

過去5年間の業績推移を見ると、日野自動車の売上高は2019年3月期に約1兆9,813億円とピークを記録した後、新型コロナウイルスの影響などで2021年3月期には約1兆4,984億円まで減少しました。その後は緩やかな回復傾向にありましたが、エンジン認証不正問題の影響で再び業績が悪化しています。

営業利益率も2016年3月期には5%前後あったものが、直近では赤字に転落するなど収益性が大きく低下しています。特に2022年以降は、エンジン認証不正問題による特別損失の計上が続き、3期連続で最終赤字を計上する厳しい状況が続いていました。

以下の表は、過去5年間の主要財務指標の推移を示しています。

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 当期純利益(百万円) 一株配当(円)
2021/3 1,498,442 12,250 12,261 -7,489 12.00
2022/3 1,459,706 33,810 37,986 -84,732 10.00
2023/3 1,507,336 17,406 15,787 -117,664 0.00
2024/3 1,516,255 -8,103 -9,233 17,087 0.00
2025/3 1,697,229 57,490 39,310 -217,753 0.00

この表からわかるように、2025年3月期は売上高と営業利益は回復したものの、特別損失の影響で最終赤字となり、配当も3期連続でゼロとなっています。

商品・サービス:日野自動車の事業内容

主力製品ラインナップ

日野自動車の主力製品は、小型トラックの「デュトロ」、中型トラックの「レンジャー」、大型トラックの「プロフィア」などのトラックシリーズと、観光バスなどの商用車です。

特に「デュトロ」は「ヒノノニトン」として知られる小型トラックで、乗用車感覚で運転できる操作性の良さから人気があります。また、「プロフィア」は2023年4月に改良モデルが投入され、車線逸脱防止システムやドライバーの異常を感知すると自動で停止する最新鋭の安全支援機能が装備されています。

日野自動車のトラックの特徴は、その馬力の高さ耐久性にあります。特に馬力がありながらも振動が少なく、車体の強度が高いトラックは、ダカールラリーを走り抜いた実績もあり、その信頼性の高さから消防車などの特殊車両にも採用されています。

サービス展開

日野自動車は、単にトラックやバスを販売するだけでなく、「トータルサポート」と呼ばれる包括的なサービスを提供しています。これには、車両の保守・点検サービス、部品供給、運行管理システム、ドライバー教育などが含まれます。

特に注目すべきは、1964年に開始された「フィールドメカニック制度」で、これは顧客の現場に技術者が出向いてサービスを提供する先進的な取り組みでした。この顧客密着型のサポート体制は、日野自動車の強みの一つとなっています。

また、近年では環境技術にも力を入れており、1991年に世界初の市販ハイブリッド路線バスを発売するなど、環境対応車の開発にも積極的に取り組んでいます。2020年にはBYD(比亜迪)と電気自動車(EV)など電動商用車の開発で協業する戦略的パートナーシップ契約を結ぶなど、電動化への取り組みも加速させています。

業界内でのポジション:市場シェアと競争力

国内市場シェア

日本国内のトラック市場では、日野自動車はシェア2位の地位を占めています。2024年の国内普通トラック販売台数シェアでは、いすゞ自動車が40.1%でトップ、日野自動車が26.0%で2位、三菱ふそうが19.6%で3位、UDトラックスが14.3%で4位となっています。

日野自動車は、かつては国内シェアトップに君臨していた時期もありましたが、2022年のエンジン不正問題により一時製造中止になったこともあり、販売台数を大きく落としました。しかし、2024年には前年比8.7%増の販売台数回復を見せており、徐々に市場での信頼を取り戻しつつあります。

グローバル展開

世界市場では、日野自動車は商用車メーカーとして世界シェア8位(約1.15%)の地位にあります。特にアジア地域では強いプレゼンスを持ち、台湾、タイ、インドネシア、マレーシア、パキスタンなどでは高いシェアを誇っています。

日野自動車は2007年に海外向け販売台数が国内向けを上回り、現在は総販売台数の7割以上を海外向けが占めています。特にASEAN地域を重視しており、タイには「日野スワンナプーム ものづくりセンター」を設立し、ASEAN市場向けの商品企画・開発・生産機能を集約・強化しています。

また、フィリピンでも事業を強化しており、人口増加や都市化の進展に伴う輸送インフラの整備需要を背景に、現地子会社を通じた事業展開を進めています。

メリット・デメリット:日野自動車の強みと課題

メリット(強み)

  1. 高い技術力と製品品質:日野自動車のトラックは、馬力の高さと耐久性に定評があります。特にエンジンの耐久性や車体を含めた信頼性の高さは、長距離輸送や過酷な条件下での使用に適しており、顧客から高い評価を得ています。
  2. トヨタグループの一員としての安定性:トヨタ自動車の連結子会社であることによる資金力や技術共有のメリットがあります。特にハイブリッド技術などはトヨタの技術を活用しており、環境対応車の開発で優位性を持っています。
  3. 充実したサービスネットワーク:全国に広がるディーラーネットワークと「フィールドメカニック制度」に代表される顧客密着型のサポート体制は、アフターサービスの質の高さにつながっています。
  4. アジア市場での強いプレゼンス:特にASEAN地域では高いシェアを持ち、現地のニーズに合わせた製品開発と生産体制を構築しています。タイを中心としたASEAN地域は日野自動車の重要な成長市場となっています。

デメリット(課題)

  1. エンジン認証不正問題による信頼低下:2022年に発覚したエンジン認証不正問題は、日野自動車の企業イメージと信頼性に大きなダメージを与えました。この問題により、一部製品の生産・販売停止や巨額の特別損失の計上を余儀なくされています。
  2. 財務基盤の弱体化:認証不正問題による特別損失の計上が続き、自己資本比率が12.1%まで低下するなど、財務体質が大きく悪化しています。これにより、新技術開発や設備投資への資金配分が制限される可能性があります。
  3. 電動化への対応の遅れ:商用車の電動化競争では、欧州や中国のメーカーに比べて出遅れている面があります。特に大型商用車の電動化技術では、競合他社との技術格差が課題となっています。
  4. 国内市場の成熟化と競争激化:日本国内のトラック市場は成熟しており、大きな成長は見込めない状況です。また、いすゞ自動車やUDトラックスなど競合他社との競争も激しくなっています。

業界他社比較:競合との優位性と課題

主要競合企業との比較

日本の商用車市場における主要競合企業は、いすゞ自動車、三菱ふそう、UDトラックスです。それぞれの特徴と日野自動車との比較を見ていきましょう。

いすゞ自動車:国内シェア1位(40.1%)を誇り、特に小型トラックでは20年連続販売台数1位の実績があります。ディーゼルエンジンの技術力に定評があり、パワフルな走行性能が特徴です。2023年度の販売台数は2万7,452台と、日野自動車の約1.8倍の規模を持っています。

三菱ふそう:ドイツのダイムラートラックの傘下にあり、エンジンのバランスの良さと車両価格の安さが特徴です。特に長距離運転に適した振動や騒音の少なさから、長距離輸送のドライバーに人気があります。2023年度の販売台数は1万5,086台で、日野自動車とほぼ同規模です。

UDトラックス:かつては日産ディーゼル工業として知られ、現在はいすゞ自動車の傘下にあります。エンジン馬力の強さとクラッチの強さが特徴で、坂道発進や牽引に強みを持っています。高級感のある内装も特徴の一つです。

日野自動車の特徴は、トヨタグループの技術を活かしたハイブリッドシステムの搭載車両が多いことと、エンジンの耐久性や車体の信頼性の高さです。特に消防車などの特殊車両にも採用されるほどの信頼性は、他社にない強みとなっています。

財務指標の比較

主要競合企業との財務指標の比較を見ると、日野自動車は収益性や財務健全性の面で課題を抱えています。

営業利益率では、いすゞ自動車が8%前後を維持しているのに対し、日野自動車は2025年3月期で3.4%と低い水準にとどまっています。自己資本比率も、いすゞ自動車の50%超に対し、日野自動車は12.1%と大きく見劣りします。

研究開発投資では、2025年度にいすゞ自動車が前年比16.8%増1,600億円を計画しているのに対し、日野自動車は9.1%増600億円と、投資規模で大きな差があります。

将来性:成長戦略と今後の展望

三菱ふそうとの経営統合

日野自動車の将来を考える上で最も重要なのは、2026年4月に予定されている三菱ふそうトラック・バスとの経営統合です。この統合により、新たに設立される持ち株会社の傘下に両社が入り、それぞれの親会社であるトヨタ自動車とドイツのダイムラートラックが持ち株会社の株式を25%ずつ保有する形となります。

この統合の目的は、開発・調達・生産などの領域で事業効率の向上を図り、日本の商用車メーカーとしての競争力を高めることにあります。特に、脱炭素への対応や自動運転などの次世代技術開発での連携を強化し、アジアなどの市場での存在感を高めることが期待されています。

統合後も日野と三菱ふそうのブランドは維持されますが、プラットフォームの共通化など、コスト削減と効率化が進められる見込みです。

電動化と環境技術への取り組み

日野自動車は、商用車の電動化に向けた取り組みを加速させています。2020年にはBYDと電動商用車の開発で協業する戦略的パートナーシップを締結し、EVの開発と普及促進に取り組んでいます。

また、トヨタ自動車と燃料電池(FC)大型トラックを共同開発するなど、多様な環境技術の開発を進めています。2025年度の研究開発投資計画では、ICE車やEV、燃料電池車(FCV)などの新商品開発に開発資源を充てる方針を示しています。

日本政府の「グリーン成長戦略」では、2030年までに小型商用車の新車販売の20~30%をEVやFCVなどの電動車にする目標が掲げられており、日野自動車もこの目標に沿った製品開発を進めています。

アジア市場での成長戦略

日野自動車は、成長市場であるアジア地域での事業拡大に注力しています。特にASEAN地域では、タイに「日野スワンナプーム ものづくりセンター」を設立し、ASEAN最適車の現地での一貫した商品化・生産供給体制を構築しています。

フィリピンでも事業を強化しており、人口増加や都市化の進展に伴う輸送インフラの整備需要を背景に、現地子会社を通じた事業展開を進めています。これらの取り組みにより、アジア市場での競争力強化と事業拡大を目指しています。

経営改革と体質改善

エンジン認証不正問題を受けて、日野自動車は企業風土の改革と体質改善に取り組んでいます。2021年6月に掲げた新たな企業理念「HINOウェイ」のもと、コンプライアンス意識の向上と職場風土の改善を図っています。

具体的には、セクショナリズムやパワーハラスメント体質の改善、コンプライアンスを最優先する企業風土づくりなどに取り組んでおり、「お客様や社会になくてはならない会社、いつまでも選んでいただける会社に生まれ変わる」ことを目指しています。

また、中長期的な成長に向けた方針として、2030年度には営業利益率8%の実現を目指しています。そのために、保有資産の売却や固定費の削減などによる財務体質の改善、生産性向上のためのムダの排除、商品のリードタイム短縮などに取り組んでいます。

まとめ:投資判断のポイント

日野自動車の株価を評価する上で、以下のポイントが重要となります。

  1. 短期的なリスク要因:エンジン認証不正問題による特別損失の計上が続いており、財務基盤の弱体化が懸念されます。また、3期連続の無配当となっており、当面は配当による投資リターンは期待できない状況です。
  2. 中長期的な成長要因:三菱ふそうとの経営統合による事業効率の向上と競争力強化、アジア市場での事業拡大、電動化技術の開発などが、中長期的な成長ドライバーとなる可能性があります。
  3. 業界環境の変化:「物流の2024年問題」や環境規制の強化など、商用車業界を取り巻く環境は大きく変化しています。これらの変化に対応できるかどうかが、今後の競争力を左右する重要な要素となります。
  4. 企業価値の評価:現在の株価は理論株価(536円)を下回っており、PBR(1.19倍)やPER(10.6倍)の水準から見ても、割安感がある水準にあると言えます。ただし、特別損失の計上リスクや財務基盤の弱さを考慮する必要があります。

日野自動車は、エンジン認証不正問題という大きな試練に直面していますが、三菱ふそうとの経営統合や電動化技術の開発、アジア市場での事業拡大など、将来の成長に向けた取り組みも進めています。投資判断にあたっては、これらのリスク要因と成長要因を総合的に評価することが重要です。

商用車業界は、環境規制の強化や電動化の進展、自動運転技術の発展など、大きな変革期を迎えています。日野自動車がこれらの変化にどのように対応し、企業価値を高めていくかに注目していく必要があるでしょう。

参考元サイト:

https://www.nikkei.com/nkd/company/history/yprice/?scode=7205 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%87%8E%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250610/k10014831091000.html

執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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