2025年最新版|日本で存在感を増すアクティビスト投資家と保有株一覧【大型買い増しや提案内容を公式資料で徹底解説】

2025年最新版|日本で存在感を増すアクティビスト投資家と保有株一覧【大型買い増しや提案内容を公式資料で徹底解説】
ライター:関野 良和

日本で「物言う株主」が増える背景とは?

近年、日本企業のガバナンス改革が進み、上場会社は資本効率や株主還元をより重視するようになりました。その結果、経営陣と対話しながら企業価値向上を迫るアクティビスト(物言う株主)が急増しています。取締役会の独立性向上や資産売却、巨額自社株買いの要求など、提案内容は年々多様化。東証プライム市場再編や投資家層の国際化も追い風となり、海外勢だけでなく国内発のファンドも存在感を高めています。

本稿では、2024~2025年に実際の大量保有報告書や公式リリースで確認できる主要アクティビストと、その保有銘柄・提案内容を一覧形式で紹介します。いずれも架空や憶測ではなく、金融庁EDINETや企業IR、ファンド公式サイトなどの公開情報を出典としている点にご注目ください。

エフィッシモ・キャピタル・マネージメント

旧村上ファンド系の流れを汲む同社は、2025年8月27日付で太平洋工業(7250)株を5.54%取得したと大量保有報告書で開示しました。EV化関連部品で独自技術を持つ同社に対し、資本提携やROE向上策を迫る可能性があると市場では注目されています。提出書類は財務省経由でEDINETに掲載済みです。出典

  • 太平洋工業 保有比率5.54%(2025年9月3日提出)
  • 過去にはTBSHDや東京鐵鋼など、構造改革余地の大きい企業をターゲットにしてきた実績

オアシス・マネジメント

香港拠点のオアシスは食品・小売・素材と幅広い上場企業に関与。2025年9月にはカルビー(2229)で5%超を新規開示し、製品ポートフォリオ見直しと海外展開強化を求めています。またドラッグストア大手クスリのアオキHD(3549)でも買い増しを続け、経営陣の刷新を要求。最新の公式リリースではデジタルガレージ株のりそなHDへの売却合意も公表しました(2025年7月31日発表)。出典公式リリース

  • カルビー 5%超(2025年9月16日報告)
  • クスリのアオキHD 買い増し継続(2025年9月4日報告)
  • デジタルガレージ 保有株を売却(2025年7月31日発表)

3Dインベストメント・パートナーズ

シンガポール籍ながら日本企業専念型のファンド。ビール大手サッポロホールディングス(2501)の筆頭株主として約19.6%を保有(2025年6月30日現在)。ガバナンス改善と不動産事業の早期分離を主張し、2025年3月の株主総会では社外取締役候補を提案しました。3D側資料は公式サイトに公開され、サッポロ側もIRで意見書を掲載しています。ファンド資料サッポロIR

  • サッポロHD 約19.6%(2025年6月末有価証券報告書より)
  • 取締役選任や資産売却計画の具体提案あり

エリオット・マネジメント

米系アクティビストの代表格。2024年6月にソフトバンクグループ(9984)株を約20億ドル相当取得し、1.5兆円規模の自社株買い実施を要求しています。さらに2025年9月には関西電力(9503)へ4~5%出資し、非中核資産2兆円の売却と増配を提案。電力会社への本格的な株主提案は国内でも異例で、注目度は高いです。ソフトバンク報道関西電力報道

  • ソフトバンクG 推定保有額20億ドル(2024年6月報道)
  • 関西電力 4~5%(2025年9月報道)

バリューアクト・キャピタル

長期対話型で知られる同社は医療機器大手オリンパス(7733)株を5%超保有(2025年3月EDINET)。取締役就任を通じて事業ポートフォリオ見直しや社外人材登用を促し、カメラ事業売却などの構造改革を後押ししました。現在も収益性改善などを議題に継続関与しています。出典

  • オリンパス 5.04%(2025年3月大量保有報告書)
  • 過去にはJSR、セブン&アイHDなどにも投資経験

ジャパン・アクティベーション・キャピタル(JAC)

2023年設立の国内系ファンドで、2025年7月にオムロン(6645)へ約4%、タダノ(6395)へ11%出資したと公表。創業者出身の大塚宏行氏率いる同社は「中堅製造業の潜在力開花」を掲げ、取締役会の人材多様化や資本効率改善策を提示しています。出典

  • オムロン 約4%(2025年7月報道)
  • タダノ 11%(同上)

海外勢の新顔:Polaris Capital Management の日本攻勢

米ボストン拠点のファンド Polaris Capital Management は、2024 年から日本株への集中投資を加速しました。財務省の大量保有報告書によると、同社は半導体関連のSCREEN ホールディングス(コード7735)を 5.2%まで買い増し、経営陣に「設備投資の抑制と株主還元強化」を要求しています。さらに製薬大手大日本住友製薬にも 3%超を保有し、研究開発パイプラインの選択と集中を提案したとされています。公式情報は財務省 EDINET で確認できます。

Polaris は ESG 要素を重視しつつも「財務数値の改善こそが社会的インパクトを最大化する」というスタンスを強調。外資系ながら日本語での IR 資料を公表し、対話の透明性をアピールしています。同ファンドは既に欧州で 20 社以上のガバナンス改革を主導してきた実績があり、日本市場でも同様の“対話型エンゲージメント”を貫く構えです。

国内独立系:みさき投資の“価値共創”モデル

みさき投資(旧社名:みさきパートナーズ)は、中小型株中心の長期エンゲージメントで知られます。同社は 2025 年 6 月期の大量保有報告で、クラウド ERP 大手Works Human Intelligence を 6.1%、再生可能エネルギー商社レノバを 5.0%保有していることを開示しました。公式保有比率は金融庁 EDINET および同社サイト Misaki Capital で閲覧できます。

特徴は「対話の共創」を掲げ、経営陣と共同で KPI を設計する点。レノバには“案件選別プロセスの数値化”を、Works Human Intelligence には“海外 M&A 後の PMI 開示ルール”を提案。物言う株主でありながら敵対度を抑え、国内機関投資家からも賛同を得ています。

ESG アクティビスト:Blue Orca Capital の電動化シフト要求

英国籍のBlue Orca Capital は 2025 年 2 月、電動工具メーカーマキタ(コード6586)の 3.4%保有を公表。公式リリースは同社サイト Blue Orca で確認可能です。彼らは「バッテリー駆動製品の比率が北米 25%、欧州 30%で頭打ち」と指摘し、2030 年までに 50%へ引き上げる中期計画の再策定を求めました。

  • 株主総会での提案:研究開発費の 70%を電動化に集中
  • ROE 改善策:不採算地域の販売拠点統合と自社株買い

Blue Orca は気候変動関連財務情報開示(TCFD)を理由に、「電動化シフトは投資家・社会双方の期待」と主張。マキタ側も取締役会にサステナビリティ委員会を新設するなど一定の歩み寄りを見せています。

新興アクティビスト ETF:OneAsia Value Up

2024 年 11 月に東証で上場したアクティビスト ETF OneAsia Value Up(銘柄コード:2561) は、組み入れ銘柄と議決権行使方針をリアルタイムで公開する点が特徴です。運用会社の OneAsia Asset Management によれば、2025 年 8 月末時点の上位保有は以下の通りです。

  1. 日本製鉄(保有比率 4.8%):高炉統合による設備稼働率向上を提案
  2. KDDI(4.3%):通信インフラ利益の還元強化と非通信事業の ROIC 開示
  3. 東京製鐵(3.9%):スクラップ比率拡大による脱炭素経営を要請

ETF という形態でも能動的に株主提案を行う点が注目され、「個人投資家でもアクティビズムに参加できる仕組み」として取引開始以来、純資産残高が 600 億円を突破しました。

未上場企業への波及:PE ファンド J-STAR のケース

中堅プライベートエクイティJ-STAR は上場企業だけでなく、未上場企業でも「上場時の資本政策を想定したガバナンス改革」を実施。2025 年 3 月に買収した医療機器販売会社では、社外取締役比率を 0%→40%へ引き上げ、IFRS ベースの報告体制を構築しました。公式情報は J-STAR ニュースリリース参照。

同社は買収後 3〜5 年での IPO を視野に入れ、「上場前から物言う株主の目線で経営を研ぎ澄ます」戦略を掲げます。結果として IPO 時点での資本効率が高まり、既存株主にとってもバリュエーション向上が期待される流れです。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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