高配当のETFは”やめとけ”といわれているのはなぜ?


高配当ETFはヤバイので”やめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します
高配当ETFについてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、資産形成の選択肢として人気を集める高配当ETFですが、「おすすめしない」「やめとけ」という声も少なくありません。本当に高配当ETFは投資対象として避けるべきなのでしょうか?それとも誤解に基づいた評判なのでしょうか?様々な角度から検証していきます。
高配当ETFとは何か
高配当ETFとは、証券取引所を通じてリアルタイムで売買できるETF(上場投資信託)のなかで、相対的に分配金が潤沢に発生する銘柄を指します。高配当株などに投資し、定期的に投資家へ分配金を支払うのが特徴です。
ETF(Exchange Traded Fund)は、東京証券取引所などの証券取引所に上場しており、リアルタイムで取引可能な投資信託のことです。ETFに投資すると、ファンドマネージャーと呼ばれる投資の専門家が、様々な銘柄に分散投資を行い、その利益を還元してくれます。
高配当ETFの場合、高い配当利回りを持つ株式銘柄(高配当株)で投資ポートフォリオを構成しています。一般的に高配当株とされるのは配当利回りが4%以上の株式で、ETFの場合は「分配金利回り」として次の式で計算されます。
分配金利回り(%) = 過去1年間の分配金の合計÷ある時点の基準価額× 100
高配当ETFが”やばい”と言われる理由
ネット上では高配当ETFについて「やばい」「やめとけ」という声が見られることがあります。その背景にはどのような理由があるのでしょうか。
理由1: 高配当株は成長性に欠ける場合がある
中原良太氏(株式予報)によれば、高配当ETFの弱点として「成長性が低い株が含まれやすい」点が挙げられています。高配当株は成熟した企業に多い傾向があり、今後も高い成長性が見込める若い企業の場合は、利益を設備や事業への再投資に回すことが多いと言われています。
例えば米国の事例として、高配当ETF(S&P高配当ETF、SPYD)と、指数ETF(S&P連動ETF、SPY)の8年間の成績を比較すると、高配当ETFのパフォーマンスが指数ETFより劣っていたという報告があります。
理由2: 減配リスクが存在する
高配当株・ETFへの投資には減配リスクが伴います。購入した時には高配当の金融商品でも、業績不振や不景気といった理由で配当金や分配金が減るリスクがあります。
「買ってはいけない高配当株」として、特別配当や記念配当で一時的に配当が増えているだけのケースや、投資家から評価が低い低成長株などが挙げられています。減配が起こると、配当金が減り利回りも減少し、インカムゲインが少なくなってしまう可能性があります。
理由3: 分配金の再投資と複利効果
高配当ETFは、分配金の自動的な再投資ができないというデメリットがあります。一般的な投資信託では、あらかじめ設定しておくことで分配金を自動的に再投資できますが、高配当ETFでは分配金を受け取るたびに自分で再度買い付けを行う必要があります。
これにより複利効果(分配金が分配金を生み、元本が大きくなる効果)が期待できなくなる点は大きなデメリットと言われています。
理由4: 分配金の希薄化・濃縮化現象
高配当ETFには「分配金の希薄化・濃縮化が起きやすい」という特徴があります。ETFの決算・分配時には、ETFが分配原資を貯めた状態にありますが、このタイミングでETFの発行市場において設定・解約があると、分配金額が変動する現象が起こります。
ETFの1口当たりの分配金額=分配原資÷発行済み口数
設定(購入)が増えると希薄化し、解約が増えると濃縮化するため、期待した分配金より少なくなったり、多くなったりすることがあるのです。
理由5: 高配当を追求することによるリスク増加
分配金利回りが極端に高い場合には注意が必要です。異常に高い配当利回りの背景には、業績の悪化が潜んでいる可能性があります。
配当利回りは次の計算式で求められます。 配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金÷株価×100
配当利回りが高くなる要因は、1株あたりの配当が増えるか、株価が下がるかのどちらかです。株価下落の要因の一つとして業績の悪化が考えられ、業績が悪化している企業に投資すると、株価下落による含み損を抱えるだけでなく、将来的に減配・無配になってしまうリスクもあります。
高配当ETF投資の「誤解」と「真実」
高配当ETFに関しては、いくつかの誤解も広がっているようです。代表的な高配当ETFであるVYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)についての誤解と真実を見ていきましょう。
誤解1:「高配当ETFは配当が低いから意味がない」
確かにSPYDなどの一部高配当ETFと比較すると配当利回りは低めかもしれませんが、S&P500全体(VOOなど)と比較すれば依然として高い配当利回りを誇っているようです。また、配当だけでなく価格上昇も含めたトータルリターンで考えることが重要だと言われています。
誤解2:「高配当ETFは値上がりしない」
例えばVYMは直近5年で33%以上、設定以来110%以上の値上がりを記録しているとされており、決して値上がりしないわけではないようです。ただし、テクノロジー株中心のETFなどと比較すると上昇率は控えめである可能性はあります。
実際に1年間VYMに投資した投資家の例では、約9.8%のリターンが得られたという報告もあります。「総投資額:2,345,710円、時価評価額:2,575,907円、評価損益:+230,198円」という具体的なケースも紹介されており、決して”やばくない”パフォーマンスを示しているようです。
誤解3:「高配当ETFは分散投資には不向き」
VYMのように529銘柄に投資するETFは、むしろ分散投資の観点では非常に優れていると言えるでしょう。セクター比率に多少の偏りはあるものの、単一銘柄リスクは大きく軽減されています。
誤解4:「高配当ETFは初心者には複雑すぎる」
実際には、ETF1銘柄を購入するだけで500社以上に分散投資できる高配当ETFは、個別株投資よりもはるかにシンプルであり、初心者にも取り組みやすい投資対象だと言われています。
高配当ETFの”おすすめ”ポイント
高配当ETFには「おすすめしない」理由だけでなく、多くの「利点」も存在します。
定期的な現金収入が得られる
高配当ETFに投資すると、定期的に潤沢な現金収入が得られます。投資で得た収益を生活費など何らかの用途に使用したい方には大きなメリットと言えるでしょう。
価格損益がプラス・マイナス双方に動く可能性があるのに対して、分配金は運用成績により少額もしくはゼロになるリスクはあっても、マイナスになることはありません。プラスの収入を長期で獲得していくほど価格下落を分配金の総収入で補えるため、損失リスクに耐えられるようになるのが特徴です。
実現した収益からのみ分配金が払い出される安心感
ETFは、実際にファンドが受け取った分配や金利収入が分配金の原資となるため、投資信託と比べて安心感があります。投資信託は「特別分配金」という形で、実際にファンドが獲得した利益を超えて分配金を出すことが可能ですが、ETFはこのような事態が発生しないため、獲得した分配金は投資収益として受け取れます。
元本を払い出して分配金を出せる投資信託と比べると、分配金支払いが原因で大きく基準価額が下がるリスクが小さいのが特徴です。
分散投資でリスクを抑えられる
個別株で高配当株に投資する場合、選んだ銘柄が「減配/無配」となった場合や「収益悪化」した場合に大きな影響を受けることになります。ETFは複数の銘柄にまとめて投資をするため、ひとつのETFを買うことで複数の高配当株式に分散投資をすることができ、リスクを抑えながら分配金を受け取ることが期待できます。
NISA活用のメリット
NISAで投資すれば分配金から税金が引かれないため、NISAの成長投資枠での投資先としても適しています。通常なら分配金から20.315%引かれる税金が、NISA口座であれば非課税で分配金を受け取れます。
高配当ETFの代表的な銘柄と特徴
VYM (Vanguard High Dividend Yield ETF)
VYMは世界最大級の資産運用会社の一つであるバンガード社が運用している高配当ETFです。529銘柄に投資することで分散効果を高め、長期的な値上がりも期待できる銘柄として評価されています。
SPYD (S&P高配当ETF)
SPYDはS&P500のうち、高配当利回りの80銘柄に投資するETFです。分配金利回りが高いことが特徴ですが、指数ETF(SPY)と比較すると長期的なパフォーマンスで劣後するケースもあるようです。
また、SPYDについては「大減配騒動」という事例もありましたが、両学長(リベラルアーツ大学)によれば、これは誤解であり「ETFは分配原資以上の分配金を出せない(タコ足配当はできない)」というETFの基本的な仕組みに起因するものだったと説明されています。
日本株の高配当ETF
日本株市場にも高配当ETFは存在します。2024年から始まった新NISAの影響もあり、SBI証券などでランキングを見ると高配当ETFは人気があるようです。
高配当株・ETF投資の実例と体験談
高配当株・ETF投資の実例として、記事では、J-REIT(利回り約6%)や日本郵政(6178)、九州旅客鉄道(9142)などの高配当株式を運用し、年間200万円程度の配当収入を得ているという体験談が紹介されています。
減配に関しては「短期間、一時的な減配は気にしないが1年を超えたら売却を考える」とのことで、値下がり・元本割れについては「もちろんリスクがあることは把握しているが、現在の配当収入のメリットがデメリットやリスクを上回っている」と評価しているようです。
基本的に長期投資で、株価やREITの価額が下落しても保有し続けるそうですが、「○%下がったら損切りする」などルールを決めて高配当投資をしているとのことです。
高配当ETFの上手な活用法
高配当ETFへの投資を検討する際には、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
1. 買ってはいけない高配当株の見極め方を知る
高配当株・ETFを選ぶ際には、以下の4つの特徴に注意すると良いとされています。
- 高すぎる配当利回り:極端に高い配当利回りには株価下落や業績悪化の可能性が潜んでいる場合があります
- 不安定な業績:安定した業績基盤を持つ企業を選びましょう
- 配当額の急増:一時的な特別配当や記念配当に惑わされないようにしましょう
- 100%以上の配当性向:持続不可能な配当は減配リスクが高まります
2. 長期投資の視点を持つ
高配当ETFは短期的な値上がり益よりも、長期的な分配金収入と複合的なリターンを目指す投資商品です。短期的な相場観に左右されず、長期的な視点で保有することが重要です。
3. 分散投資の一環として位置づける
高配当ETF単体ではなく、ポートフォリオ全体のバランスを考えて投資することが大切です。指数連動型ETFや成長株ETFなどと組み合わせることで、リスクとリターンのバランスを取ることができます。
4. NISA口座の活用
高配当ETFはNISA口座で保有することで、分配金の非課税メリットを最大限に活かすことができます。
まとめ:高配当ETFは本当に”やめたほうがいい”のか
ここまで高配当ETFのデメリットと「おすすめしない」と言われる理由、そして「誤解」と「利点」について見てきました。結論として、高配当ETFは以下のような投資家に向いていると言えるでしょう。
- 定期的な現金収入を重視する方:分配金を生活費や他の用途に活用したい投資家
- 長期的な視点を持つ方:短期的な値動きよりも長期的な資産形成を目指す方
- 分散投資の重要性を理解している方:個別株のリスクを避けたい方
- NISA活用を考えている方:非課税メリットを活かしたい方
一方で、以下のような方にはあまり向いていないかもしれません。
- 高いキャピタルゲインを期待する方:値上がり益を重視する方は成長株ETFの方が向いているかもしれません
- 短期的な投資を考えている方:短期的な値動きは予測困難です
- 複利効果を最大化したい方:自動再投資の仕組みがない点は不便です
高配当ETFには確かに「おすすめしない」理由もありますが、投資の目的やスタイルによっては非常に”おすすめ”できる投資対象でもあります。大切なのは、自分の投資目的に合った商品を選び、そのリスクとリターンを正しく理解することです。
例えばVYMは「やばくない」実績を持ち、分散投資効果と安定した分配金が期待できるETFと言えそうです。また、日本の高配当ETFも新NISAの枠組みの中で活用する価値は十分にあるでしょう。
重要なのは、メリットとデメリットを理解し、自分の投資目的にあった形で活用することです。ネット上の口コミや評判に左右されるのではなく、自分自身の投資方針に基づいて判断してみてはいかがでしょうか。
参考文献と出典
この記事は、以下の情報源を参考に作成されています。より詳細な情報については、各出典を参照してください。 中原良太の株式予報 – 高配当ETF、おすすめしない理由と弱点 NEXT FUNDS – 高配当ETFってどう?―メリットとデメリットを考えてみます PayPay証券 – 高配当株・ETFのデメリットやリスクとは?体験談も! ZUU online – 高配当ETFとは?投資をする前に高配当ETFのメリットとデメリット あかつき証券 – 高配当ETFの基本とメリット かぶリッジ – 買ってはいけない高配当株の見極め方は4つ! IOI Life – 米国株の高配当ETF「VYM」は”やめたほうがいい”といわれているのはなぜ? クリック&ペイ – 高配当ETFはおすすめしない?理由やメリット・デメリット YouTube – 両学長 リベラルアーツ大学「第211回【知っておくとトク】SPYD大減配騒動に学ぶ」 Next Funds – 配当利回りが魅力の高配当株ETF
(注:この記事は情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴いますので、最終的な判断は読者ご自身の責任において行ってください。)
