年金を120万円から170万円へ繰下げ増額したときの税金・保険料と住民税非課税判定を完全解説

年金を120万円から170万円へ繰下げ増額したときの税金・保険料と住民税非課税判定を完全解説
ライター:101LIFE 編集部

繰下げ受給で増額するしくみ

老齢基礎年金・老齢厚生年金は、65歳からの受給開始を1ヵ月遅らせるごとに0.7 %ずつ増え、最長75歳まで繰下げると最大84 %の上乗せとなります。たとえば本来年額120万円だった人が、繰下げにより170万円へ増やすケースは、概ね65歳から73歳弱まで繰下げたイメージです。増額分は一生続くため長寿リスクに備えやすい反面、課税所得や各種保険料の算定基準も同時に押し上げられる点に注意が必要です。制度の詳細は日本年金機構が公開する「繰下げ受給のご案内」をご確認ください。

120万円→170万円になった場合の所得税・住民税

課税所得の計算

公的年金は「雑所得」として課税され、まず年金額から公的年金等控除を差し引きます。65歳以上で年金収入330万円以下の場合、控除額は110万円(2026年分も同額)です。

  • 年金120万円:120万円-110万円=10万円(所得)
  • 年金170万円:170万円-110万円=60万円(所得)

基礎控除43万円を差し引くと、120万円の場合は課税所得ゼロ、170万円の場合は17万円が課税所得となり、所得税は5%で約8,500円、住民税は10%で約17,000円課税されます。

源泉徴収の留意点

年金支払時の源泉徴収税率は、年間所得見積額により変動します。170万円になると毎月の手取りが数百円単位で減るため、国税庁の年金と税の手引きで確認し、還付・追徴が出ないよう扶養控除等申告書の提出を忘れないようにしましょう。

国民健康保険料・介護保険料への影響

国民健康保険(国保)と介護保険の保険料は、前年の所得(基礎控除後)を用いて各自治体が計算します。多くの市区町村で「所得割」と「均等割・平等割」が組み合わされており、所得割部分はおおむね6〜10 %前後です。120万円の場合は所得ゼロなので所得割は発生せず、均等割のみ。一方170万円の場合は17万円に対し所得割が加算され、年間1万~2万円程度の負担増が生じる例が一般的です(東京都23区モデル)。詳細はお住まいの自治体の保険料額表をご確認ください。

  • 国保:所得割率×17万円+均等割
  • 介護保険(第1号被保険者):所得段階が1→2へ上がりやすく、月額200~600円増が目安

負担増は繰下げ後の年金増額分に比べれば小さいものの、70歳以上で高額療養費の限度額区分にも影響するので注意しましょう(根拠:厚生労働省 高額療養費制度の概要)。

住民税非課税世帯の判定ライン

住民税(均等割・所得割)ともに非課税となる基準は、「前年合計所得金額≦35万×(扶養人数+1)+10万円」。単身の場合45万円がボーダーです。また公的年金控除後の所得がゼロであれば自動的に非課税となります。年金120万円(所得ゼロ)は非課税世帯になれますが、170万円(所得17万円)は基準超過のため課税世帯となり、次の影響があります。

  1. 介護保険料第1段階→第2段階へ(保険料上昇)
  2. 高額療養費の「現役並みⅢ」区分になる可能性
  3. 各種福祉サービス(介護予防・障害福祉など)の負担割合が2割→3割に増えるケース

詳細基準は自治体ごとに微調整があり、例えば横浜市は住民税非課税の要件を公開しています。

繰下げ増額と税・保険料を差し引いた実質収支

概算モデル(単身・国保加入)で計算すると、年金額+50万円に対し増える負担は、

  • 所得税・住民税:約2万5,000円
  • 国保・介護保険料:約2万円
  • 各種減免喪失による実費増(医療費等):年間0~数万円

合計4万5,000~7万円と見込まれ、手取りベースでは40万円超のプラスが期待できます。繰下げによる増額分が将来の負担増を上回るかどうかは平均寿命までの受給総額で比較する必要があります。日本年金機構の「年金見込額試算ねんきんネット」を使い、ご自身の収支を試算してから判断しましょう。

執筆者のプロフィール
101LIFE 編集部
101LIFE 編集部の執筆記事一覧・プロフィールへ