70歳以上「一律3割負担」建議に松本日医会長が真っ向反論 応能負担と段階的改革を訴えた7月1日会見の全貌
日医・松本会長「70歳以上一律3割負担は到底容認できない」─7月1日会見の発言を詳報
7月1日の定例会見で示した危機感
日本医師会(日医)の松本吉郎会長は2026年7月1日の定例記者会見で、財務省財政制度等審議会(財政審)が打ち出した「70歳以上の患者自己負担を原則3割に引き上げる」との建議を厳しく批判し、「到底容認できない」と明言した。会見ではまず3期目となる新執行部の職務分担を公表したうえで、高齢者医療費負担見直しの議論に話題を移し、「持病を複数抱える高齢者に急激な負担増を課せば受診控えを招き、結果として医療費を押し上げかねない」と警鐘を鳴らした。日本医事新報社
松本会長はさらに「医療制度は〈公助=税財源〉〈共助=保険料〉〈自助=自己負担〉の3本柱で成り立つ。負担能力に応じた応能負担には理解を示すが、段階的な移行と低所得者配慮が大前提だ」と説明。制度変更を急げば「家計への打撃が治療中断を生み、結果として重症化と医療費増大を招く」として、慎重で丁寧な検討を政府に求めた。
財政審「春の建議」と骨太方針原案の背景
今回の論点は、財政審が2026年6月26日に取りまとめた建議で「可及的速やかに70歳以上の窓口負担を原則3割とすべき」と提言したことが直接の発端となっている。また、経済財政諮問会議が6月30日に示した「骨太の方針2026」原案も、年末の予算編成過程で高齢者負担見直しに結論を出す方針を明記した。これにより「高齢者原則3割化」が現実味を帯びたことから、医療界や与党内でも賛否が交錯している。日本医事新報社
- 建議は「世代間の公平性」を名目に負担増を提案
- 厚労省や一部与党議員は「低所得高齢者への影響が大きい」と慎重姿勢
- 年末までに予算編成と併せて制度改定案を整理する段取り
日医の基本スタンス─応能負担と段階的見直し
日医はこれまでも一律3割化に反対しつつ「所得に応じた負担増はやむを得ない」との立場を示してきた。松本会長は5月13日の会見でも「公助・共助・自助のバランスを崩す“負担のみ先行”は乱暴」と発言しており、今回の7月1日会見はその延長線上にある。日医on-line
そのうえで日医は、①課税所得や資産状況を踏まえた細分化、②外来特例(高額療養費)の維持・改善、③保険給付範囲の適正化──の3点を柱に、段階的で実態に即した見直しを提案している。松本会長は「医療DXやオンライン診療の活用で全体コストを抑えつつ、負担能力に応じた制度設計を図るべき」と述べ、拙速な一律引き上げよりも総合的改革を優先する姿勢を示した。
政府・与党内の攻防と今後の焦点
厚生労働省の上野賢一郎大臣は7月3日の記者会見で「一律3割は現実的でない」と言及し、負担増に慎重な立場を明確化。こうした発言は日医の主張と歩調を合わせる形だが、財政健全化を掲げる財務省や一部与党議員は依然として「早期実施」を求めており、年末の予算編成に向けて激しい調整が予想される。厚生労働省会見録
- 夏以降、与党プロジェクトチームが影響試算と代替案を精査
- 秋の臨時国会で社会保障関連法改正案が浮上する可能性
- 医療側は「診療報酬・介護報酬との一体的議論」を要望
高齢者の受診抑制を防ぎつつ、現役世代の保険料負担をどう抑えるか──。7月1日の松本会長発言は、制度設計の「急ブレーキ」と「柔軟な舵取り」の両立を政府に迫るものとなった。今後も骨太方針の最終決定、2027年度予算要求、診療報酬本則改定など多層的な論戦が続く見通しだ。