2026年5月医療保険法改正の5大ポイントと主要医療保険者比較ガイド

2026年5月医療保険法改正の5大ポイントと主要医療保険者比較ガイド
ライター:101LIFE 編集部

2026年5月29日に成立した「健康保険法等の一部を改正する法律」は、給付と負担のバランスを取りながら制度を持続可能にすることを目的としています。厚生労働省は「医療保険制度改正法が成立しました」ページで改革の骨子を示し、現役世代の負担抑制と全世代の納得感向上を掲げました。改正法は2026年度以降段階的に施行され、薬剤給付の効率化から子育て支援まで幅広いテーマを網羅しています。厚生労働省公式発表(更新日:2026年5月29日)によれば、主な改正点は五つに整理されています。ここではそのポイントと、主要医療保険者(市町村国保・協会けんぽ・組合健保・共済組合・後期高齢者医療)の特徴を比較し、実務担当者が押さえるべき留意点を解説します。

① 日常的医薬品(OTC類似薬)の保険給付見直し

風邪薬や湿布など、OTC医薬品で代替可能な医療用医薬品について保険給付の範囲を縮小し、自己負担による購入を促す仕組みが導入されます。目的は診療報酬適正化と保険財政の効率化で、処方箋医薬品と市販薬の公平性を担保するものです。対象品目は今後、薬事・食品衛生審議会で順次選定され、2027年度から段階的に適用される予定です。改革ポイント資料

患者側は軽症時に医療機関を受診せず市販薬で対処する選択肢が増え、医療現場の負担軽減にもつながります。ただし、重篤化を防ぐため、医師の判断が必要な症状は従来どおり保険給付の対象です。薬局・ドラッグストアには適正使用を啓発する役割が求められます。

② 高額療養費制度―年間上限を新設しセーフティネットを強化

これまで月単位だった自己負担上限に加え、年間上限(年額140万円程度:所得区分で異なる)が新設されます。長期治療で月ごとの上限に達しなくても、総額が年間基準を超えれば払い戻しを受けられるしくみで、慢性疾患患者の負担平準化と治療継続を支援します。同上資料

医療機関の窓口事務は、月次に加え年次集計が必要になりますが、オンライン資格確認システムに連動した一括管理で事務負担を抑制する方針です。患者への案内時は「年間でも一定額以上は支払わなくてよい」点を明確に伝えましょう。

③ 後期高齢者医療制度で金融所得を公平に反映

上場株式の配当・譲渡益など分離課税の金融所得は、確定申告の有無で窓口負担割合(1〜3割)が変動していました。改正後は証券会社の特定口座情報を活用し、申告の有無に関係なく所得判定に組み込みます。同上資料

これにより高所得者の負担が適正化され、制度間の不公平が解消されます。市区町村・広域連合は2027年1月から順次データ連携を開始し、本人通知と負担割合変更を行います。

④ 妊娠・出産費用の「見える化」と自己負担ゼロ化に向けた支援

出産費用の標準化と公表が義務化され、病院選択時の価格比較が容易になります。さらに「出産育児一時金」を活用し、標準的な出産費用(約50万円)の自己負担ゼロを目指す仕組みが導入されます。同上資料

妊婦健診14回分の公費助成も拡充され、自治体によってはオンライン母子健康相談への補助が加わります。医療機関は費用内訳を分かりやすく提示し、差額ベッド代など選択的負担について丁寧に説明することが求められます。

⑤ 子育て世帯の均等割保険料を高校生年代まで半減

国民健康保険の均等割(加入者数に応じた定額料)は、これまで未就学児が半額軽減の対象でしたが、高校生年代(18歳年度末)まで拡大されます。市町村国保では2027年度から、国保組合では2028年度から適用され、子育て期の保険料負担を実質的に下げる施策です。同上資料

財源は国・県・市町村による定率公費で賄われるため、自治体担当者は予算編成段階で国庫補助の算定方法を確認しましょう。保険料決定通知書には軽減後の金額と根拠を明記し、加入世帯の疑問に備えたFAQを整備するとトラブル防止に役立ちます。

主要医療保険者の制度比較と実務ポイント

医療保険法改正により給付・負担のルールが変わる一方、適用される具体的な手続きや保険料率は保険者によって異なります。厚生労働省が公表した「各保険者の比較(令和5年度)」比較資料PDFを基に、市町村国保・協会けんぽ・組合健保・共済組合・後期高齢者医療制度の特徴を整理します。

市町村国保(約2,803万人加入)

加入対象は自営業者や退職者など「被用者保険に入っていないすべての住民」で、保険者は市区町村です。平均所得99万円、一人当たり医療費は高く、保険料は所得連動+均等割・平等割。改正による均等割半減拡大で子育て世帯の負担が軽減される一方、高齢化率が高いため財政調整交付金の確保がカギとなります。同資料

協会けんぽ(全国健康保険協会管掌・被保険者1,668万人)

中小企業の被用者が中心で、標準報酬月額に基づく保険料を労使折半します。平均所得182万円と比較的低く、公費負担は給付費の16.4%と限定的。改正法でOTC類似薬見直しや高額療養費年間上限が導入されても、給与天引きシステムを利用するため事務負担は小さいですが、被扶養者認定要件の定期確認がより厳格化される見込みです。同資料

組合健保・共済組合(大企業・公務員等:被保険者576万人+共済組合)

組合健保は企業単位で保険料率を自主設定できるため、平均所得253万円と高い一方、事業主負担も大きく、高額療養費年間上限の導入によって企業負担の見通しが立てやすくなります。共済組合は公務員向けで保険料率が低位安定。いずれも改正内容の社内・組合員周知を迅速に行う必要があります。同資料

後期高齢者医療制度(75歳以上:被保険者2,309万人)

広域連合が保険者となり、公費と現役世代からの支援金で運営。平均医療費145万円と突出して高く、公費負担は給付費の約50%。改正により金融所得を自動反映する仕組みが導入され、窓口負担1〜3割がより厳密になります。自治体はマイナンバー連携による所得情報取得体制を整備し、通知誤りを防ぐことが重要です。同資料

執筆者のプロフィール
101LIFE 編集部
101LIFE 編集部の執筆記事一覧・プロフィールへ