60万円→35万円でも損しない!定年後再雇用の手取りと社会保険料を徹底解説
定年後再雇用で賃金が下がる理由と全体像
多くの企業は60歳以降の従業員を「嘱託」「シニア社員」などとして再雇用します。このとき月給が60万円から35万円へ下がる主因は、①同一賃金同一労働の対象外となり職務・責任が限定される、②賃金カーブの維持より雇用確保を優先する制度設計、③高年齢雇用継続給付(支給率最大15%)を前提に企業側が総コストを調整する——という三点です。とくに③は賃金と給付を合わせた「実質手取り」で見る必要があるため、名目給与だけで判断すると想定以上に減収感が強まります。
さらに定年前と同じ社会保険(厚生年金・健康保険・雇用保険)に加入し続けるケースが多い点も見逃せません。60歳到達時でも65歳までは被保険者資格が原則残るため、会社負担と本人負担はいずれも継続します。標準報酬月額の区分が変わることで保険料は下がるものの「給与減額幅>保険料減少幅」となるのが一般的です。
社会保険料率の最新数値(2026年度)
2026年4月納付分から適用される主な料率は次のとおりです。健康保険は都道府県ごとに異なりますが、ここでは東京都の協会けんぽ9.98%に40〜64歳の介護保険1.60%を加えた11.58%を使用します全国健康保険協会。厚生年金は全国一律18.3%(労使折半で9.15%)厚生労働省。雇用保険は労働者負担0.6%(一般の事業)厚生労働省。これらはいずれも「会社と折半」の仕組みですが、以下の試算では本人負担分のみを控除して手取りを比較します。
- 健康+介護:11.58% ÷ 2 = 5.79%
- 厚生年金:18.3% ÷ 2 = 9.15%
- 雇用保険:0.60%
合計負担率は15.54%です。標準報酬月額の上限(65万円)を超えない範囲であれば、実際の給与額にこの率をかければおおよその社会保険料が把握できます。
月給60万円と35万円の社会保険料と手取り比較
次のシミュレーションは扶養親族ゼロ・住宅ローン控除なし・前年所得による住民税4万円/月を前提とした概算です。所得税は国税庁「令和6年分 源泉徴収税額表」月額表を用いて計算しています国税庁。
- 定年前(60万円)
社会保険料:60万×15.54%=9万3,240円
所得税(概算):6万5,000円
住民税:4万円
手取り:60万−9.324万−6.5万−4万=40万1,760円 - 再雇用後(35万円)
社会保険料:35万×15.54%=5万4,390円
所得税(概算):1万5,000円
住民税(前年給与を反映):3万円
手取り:35万−5.439万−1.5万−3万=25万610円
名目賃金は41.7%減でも、手取りは約37.6%減にとどまります。これは社会保険料と所得税が給与額に比例して低下するためです。ただし住民税は前年の所得を基準に課税されるため、初年度は差が開きやすい点に注意が必要です。
住民税・年金受給開始との関係
住民税は6〜翌年5月まで前年所得で決まるため、定年翌年度が最も負担感が大きくなります。65歳以降に厚生年金の老齢基礎年金・老齢厚生年金の本格受給が始まると、給与との合算で「在職老齢年金」の支給停止調整額(47万円基準)が変動する可能性があります。再雇用給与を35万円に抑えると、総報酬月額相当額(給与+年金1/12)が47万円以内に収まるケースが多く、年金のカットを避けやすいというメリットもあります。
一方、65歳到達で健康保険料の介護保険分(1.60%)が第2号被保険者から第1号(住民税特別徴収)へ移行し、給与天引き部分が減少します。厚生年金保険料も70歳到達で納付義務がなくなるため、長期視点でみれば手取りは徐々に回復する流れです。
手取り減少を抑える五つのヒント
- 等級調整:標準報酬月額を33万円以下の等級に収めると、健康保険・年金とも保険料区分が一段階下がりやすい。
- 時間外労働の抑制:残業代が増えると社会保険料算定の平均報酬月額が上がるため、任意で調整できる。
- 確定拠出年金(iDeCo):掛金が全額所得控除になり、所得税・住民税を直接圧縮できる。
- 高年齢雇用継続給付の活用:賃金が75%未満に低下した場合、最大15%相当の給付を受け取れる。
- 65歳以降の被扶養者認定:配偶者が75歳未満の場合、健康保険の被扶養者に入れると世帯全体の保険料負担を抑えられる。
これらは就業規則や会社の制度設計で左右されるため、再雇用契約を結ぶ前に人事・総務部門へ詳細を確認することが大切です。