60歳以上の労働災害が過去最多―労災保険適用とエイジフレンドリー防止策を徹底解説

60歳以上の労働災害が過去最多―労災保険適用とエイジフレンドリー防止策を徹底解説
ライター:101LIFE 編集部

60歳以上の労働災害が過去最多に

厚生労働省が2026年5月に公表した統計によると、2025年(令和5年)の休業4日以上の労働災害死傷者数は13万5,371人でした。このうち60歳以上は3万9,702人で、全体の29.3%を占めて過去最多を更新しています。前年(令和4年)は3万7,988人だったため、1年間で1,700人超の増加です。高齢労働者の比率も18.7%(雇用者全体)に対し災害では3割近くと高く、年齢が上がるほど被災リスクが拡大していることが鮮明になりました。厚生労働省 報道発表 / 同 令和4年発表 / JILPT 解説記事

事故の型別では「転倒」が最多で約3万6,000人、高齢層特有の筋力低下やバランス能力の変化が影響したとみられます。男性は建設業・製造業、女性は保健衛生業・小売業での転倒骨折が目立ち、業種を問わず「足場・段差・照度」といった基本的環境の改善が緊急課題です。

統計が示す増加要因

労働力人口に占める高齢者比率は年々上昇し、2025年には雇用者6,076万人のうち60歳以上が1,138万人(18.7%)に達しました。非正規・短時間就労の拡大で安全教育が行き届きにくい点、肉体的特性の変化に作業設計が追いついていない点が指摘されています。また人手不足を背景に、重量物取扱いや高所作業を高齢者が担う事例も散見され、事故の重篤化リスクを高めています。

  • 千人率:60歳以上4.022に対し全体2.36(令和5年)
  • 男女差:女性60歳以上の「転倒」千人率2.41は20代の15倍
  • 業種別:建設業・社会福祉施設・小売業で四肢骨折が顕著

労災保険の適用と高齢労働者の保障

労災保険は「賃金を受けて働く者」であれば年齢・雇用形態を問わず自動的に適用されます。パート・アルバイト・再雇用契約者でも、業務起因・通勤起因の負傷や疾病はすべて補償対象です。保護の空白は原則ありませんが、同居親族従事者や一人親方は任意加入制度を利用する必要があります。厚労省 労災保険Q&A

60歳以降の賃金は若年層より低い場合が多く、平均賃金を基準に計算される休業補償給付や障害補償年金も低く抑えられがちです。企業は就労延長や短時間勤務に合わせて、休業補償の上乗せや民間保険を組み合わせるなど、所得保障の充実策を検討することが望まれます。

パート・短時間就労者でも受け取れる主な給付

  1. 療養補償給付(原則現物給付・治療費全額)
  2. 休業補償給付(休業4日目から賃金の80%相当※特別支給金含む)
  3. 障害補償年金・一時金(後遺障害等級1〜14級)
  4. 遺族補償年金(被災労働者が死亡した場合)

企業が取るべき高齢者災害防止策

厚労省は2020年に「エイジフレンドリーガイドライン」を策定し、作業環境・作業方法・健康管理の3側面で高齢者に配慮した職場改善を求めています。2025年度には改正労働安全衛生法に基づく「高年齢者の労働災害防止指針」も施行され、努力義務が明確化されました。ガイドライン本文 / 指針概要

具体的には①照度・段差解消など転倒要因の除去、②10㎏超の手荷役を避ける工程設計、③身体機能測定に基づく作業配置、④視覚・聴覚に配慮したピクトグラム表示、⑤保護具の軽量・着脱容易化などが盛り込まれています。国は中小企業向けに「エイジフレンドリー補助金」(上限100万円)を用意し、安全衛生設備の更新費用を支援しています。

現場で役立つ5つのチェックポイント

  • 床面に「3ミリ以上の段差」「水濡れ」「コード類」がないか
  • 作業台や工具の高さが膝・腰・肩の負担を軽減する位置か
  • 照度300lx以上を確保し、文字サイズも大きめに設定しているか
  • 休憩室で血圧・脈拍などをセルフチェックできる環境か
  • 転倒・腰痛事例を共有するKY(危険予知)活動を週1回行っているか
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