築105年の旧日本生命京都三条ビルをホテルへ再生 リビタが地域と旅人をつなぐ「TSUGU京都三条」の魅力、共有ラウンジとカフェで住民も楽しむ
築105年オフィスビルの再生で生まれた「TSUGU 京都三条」――まちと旅人が交わる新しい居場所
プロジェクト概要
京の表通り・三条通に立つ1914年竣工の旧日本生命京都三条ビルは、長らく事務所ビルとして使われてきました。株式会社リビタはこの築105年の登録有形文化財を含む建物を取得し、2019年5月にホテル〈TSUGU 京都三条 -THE SHARE HOTELS-〉としてグランドオープンさせました。公式サイトによれば、延床約2400㎡のうち文化財部分を保存しつつ耐震・設備を刷新し、49室10タイプの客室と地域に開かれたテナントを配置しています。
再生のキーワードは「ローカルへ旅を継ぐ」。歴史的ストックを壊さず活かすことで、街並みの連続性と都市観光のニーズを同時に満たす狙いです。石貼りの外壁と尖塔を象徴として残し、内部にはコンクリート躯体を現しにしたラウンジやシェアキッチンを設け、宿泊者と地域住民が自然に混ざる動線を確保しました。
歴史的価値を守るデザイン手法
設計を手掛けた辰野・片岡建築事務所(辰野金吾率いる事務所)のオリジナル意匠を継承するため、外観の石貼りやアーチ窓は最小限の補修に留めて保存。内部では文化財の尖塔が見える方向に新たな開口を設け、館内どこからでも“105年の時間”を感じられるよう計画されています。リビタのプレスリリース(2019年5月30日)によると、既存コンクリートの質感を仕上げ材として露出させることで外壁の重厚感を室内へ波及させ、古材と現代素材を対比させるデザインで「古さ=価値」をわかりやすく体験できる空間を実現しました。
保存・改修工事では、文化財部分と1983年増築部分の構造差を吸収する継ぎ目をラウンジとして活用。段差をなくしたバリアフリー化も同時に行い、誰もがアクセス可能な公共性を確保しています。
シェア空間が生む住民と宿泊客の交流
1階には岡山発のデニムブランド〈Johnbull Private labo〉、路地側にはロースタリーカフェ〈coffee and wine ushiro〉が入り、近隣住民の日常利用を促しています。宿泊者専用ラウンジには大型テーブルとシェアキッチンを設置し、料理イベントやワークショップを開催することで旅人とローカルが「同じテーブルを囲む」仕組みを構築。館内イベントの年間実施数は北陸エリアの既存店で培ったノウハウを生かし100件超を想定しています(同プレスリリース)。
- カフェは朝7時から夜23時までオープンし、街歩き前後の憩いの場に。
- アパレル店は宿泊者限定リメイク企画を実施し、旅の思い出を形に。
- ラウンジは地域クリエイターのポップアップ会場として無料開放日を設定。
こうしたハード・ソフト両面の「シェア設計」により、ホテルは単なる宿泊施設ではなく、地域コミュニティのハブとして機能しています。
地域連携と持続可能な運営モデル
リビタはTHE SHARE HOTELSシリーズで全国9拠点を展開し、いずれも「遊休不動産の再生活用×地域交流」をテーマに運営しています。TSUGU京都三条では京都市内の学生アートプロジェクトや商店街イベントとも連携し、館内外でのワークショップやマーケットを定期開催。宿泊稼働率の波を地域イベントによる昼間利用で平準化し、長期的な収益と文化財維持費用を確保するモデルを提示しています。
三条通には近代建築が数多く残りますが、用途転換が進む事例はまだ限られます。歴史資産をホテルと共用施設にコンバートし、市民・観光客双方が使い続けることで建物寿命をさらに延ばす――TSUGU京都三条は、100年を超えるビルの“次の100年”を支える好例と言えるでしょう。